エヴァコン(エルディア世界)のプロローグ
健太郎は心臓の病気で病院に入院していた(または通っていた)。
ある夜の病院で、健太郎は窓際に立ち窓の外を眺めていた。そこに、どこからかこの世に迷い込んできたケンタウロスが初めて自分以外の生物(健太郎)と出会う。病室の扉が開けっ放しだったので、好奇心から彼の病室に無断で入り込む。
恐る恐るケンタウロスが彼との距離が3mになるほど近づいたところで、彼はケンタウロスの方へゆっくり振り向いた。
互いに目を見開いた。ケンタウロスは何故か目が合ったその瞬間から健太郎に強く惹き付けられた。一方で健太郎も驚きとケンタウロスの美しさに一瞬で目が釘付けになった。
「ケンタウロス…?」とポツリと彼が目を見開いたまま呟いた。ケンタウロスは自分がそう人々から呼ばれていることを知らなかったので首を傾げて、「なんだそれは」と直接疑問を彼に投げかけた。「君のことだよ。神話では君のように下半身が馬で上半身が人間の生物を僕らは "ケンタウロス" と呼んでいるんだ」と彼は驚きつつ説明した。
「"ケンタウロス" って名前みたいだな。お前に聞く前は名前かと思った」
「ところで、何故お前と私は足の本数も体の作りも違うんだ?それとさっき言っていた人間と馬っていうのはなんだ」と分からないことだらけで更に彼に質問をぶつける。
ケンタウロスがあまりにも何も知らなさそうな様子だったので、彼は数秒ほど呆気に取られた。
「…人間も馬も君とはまた違う生き物の総称のことだよ。君と体の作りが違うのは僕が人間だから。馬は四足歩行で、君の下半身と同じ様な体を持つ生き物なんだ。ただ鼻と口が長くて目が離れていたりするよ。人間や君とは頭の作りが異なるんだ」
「そういえば…君の名前はなんていうの?僕は健太郎っていうんだ」
「私の名前…」ケンタウロスは困惑して俯き気味に視線を逸らした。
ケンタウロスの妙な雰囲気に「どうしたの?」と彼は首を傾げた。何度か言葉を発しようとするが、言い難いのかなかなか言葉が出てこず目を泳がせている。話そうと試みるケンタウロスを見て、彼は静かにケンタウロスが話すのを待つ。
ゆっくり口を開き、ケンタウロスは話し始めた。「名前…私は、自分の名前が分からないんだ…。あった気もするが、気がするだけで何も思い出せない」
「名前どころか、自分が何者なのかも分からない。自分が元いた場所も曖昧にしか思い出せなくて、この世界に来た経緯も方法も何もかも分からないんだ」
困惑と不安を抱えた顔をする。
かける言葉が見つからない。しかし、見当違いだと知りつつケンタウロスに問うた。
「…君の名前、僕が考えてもいいかな…?」と恐る恐る健太郎が口を開く。
「君がどこから来たのか、どうやって来たのかは僕にもわからない。けど、名前なら今作ることもできる。君が本当の名前を思い出すまで、君に仮の名前を付けてもいいかな?」
健太郎が続ける。
「ほら、名前があった方が呼びやすいしさ。…どうかな?」
目を見開くケンタウロスだったが、すぐにクスッと笑い、「確かに健太郎の言う通り、名前がないのは不便だ。私に名前をくれないか?」
「…!そうだな、君の名前は…セレスティア」
ふわっと窓から風が吹き風がなびく。
ボソッと「セレスティア…」と名付けられた名を呟き、一瞬呆気に取られていた。というよりハッとさせられたような気分になった。
我に返り、「セレスティア…とは、どういう意味があるんだ?何か意味があるのか?」と健太郎に疑問を口にする。
「英語にcelestialという単語があるんだ。その意味は素晴らしい、神々しい。君を一目見た時から素敵で神々しいと感じた。だから、celestialからLを抜いてセレスティア」
ニコッと健太郎は微笑を見せる。
それを聞いてケンタウロスは、「…素晴らしい名前だな。私には勿体無い。だが…健太郎が考えてくれた名だ。思い出すまでの間、セレスティアと名乗らせてもらう」
手を差し伸べ、「セレスティアだ。よろしく、健太郎」と握手を求める。
セレスティアの手を握り、「僕は健太郎。こちらこそよろしくね、セレスティア」とお互いの目をじっと見つめた。
セレスティアからはもう不安や困惑の表情は消えていた。
健太郎の死後、若くて健太郎の容姿に似ている男を沢山殺した。彼にはあの子しかいなかった。彼が死んだ現実を受け入れられず、男の子を探し暴れ続けている。彼に似てる若い男に近づいては彼と違うまたは似てなければ怒りと絶望と悲しみに苛まれ、やり場のない気持ちをぶつけるように相手を殺してしまう。
彼が死に、彼に似た人達を殺すまでは人がもろいのを理解していなかった。殺していくうちに段々人が脆い存在であることを理解していく。
ただの人間では太刀打ちできないため、複数人の魔法使いの力で(もしくは、人間に召喚されたエルシャールの手によって)最終的にセレスティアは殺される。
死後、エルシャールによって地獄行きと下され、地獄に送られるはずだった。
しかし、地獄へは送られず転生先(Decayed World)へ直に落とされる。
落とされる際に一瞬青い片目を見せた様子が違うエルシャールから「この世界では会えないけど、きっと別の世界でアイツと会えるさ」と一言かけられ、彼は落ちていった。
規則を厳守する彼が規則を破ったことと、転生先がどこかの国でもなく聞いたことも無い場所であったことから冥界が騒ぎになる。
しかし、報告書を書いた本人であるエルシャール自身も記してある転生先に思い当たる節が無く、他の天使も神もその場所を知らない上に知る術がないため、仕方なくこの事案は保留することになった。
規則を破り問題も起きたが転生は成功していると推察されるため(※冥界、地獄、天国のどこにもいないのと、セレスティアの存在していた事実が消えていないから)彼に対する処罰はなかったが、地獄の管理人クラネェールから次回からは手順を飛ばして転生させるのではなく地獄へ送るように注意された。
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